循環器科
肥大型心筋症
猫においてよく見られる心臓病が肥大型心筋症 (hypertrophic cardiomyopathy:HCM)と呼ばれるものです。
この病気は心臓の筋肉が分厚く肥大してしまうことで、心臓自体の動きが悪くなってしまい循環状態の悪化を招く病態です。
好発猫種はメインクーン、ラグドール、スフィンクス、ベンガル、アメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘア、ノルウェイジャンフォレストキャット、サイベリアンなどが知られており、発症年齢は幅広く、平均は7歳ほどであるが、若齢期からの発症も報告されています。
HCMは重症化しなければ症状が出ないことが多く、犬の僧帽弁閉鎖不全症と異なり心雑音で判断できないことも多々あります。
中齢期以降の健康診断や、皮下点滴やステロイドなど心臓に負荷を与える可能性のある治療、手術前などには心臓の超音波検査の実施が推奨されます。
HCMの具体的な病態像としては心臓内の心室部の筋肉が厚みを増すことで心臓自体が拡張しにくくなり、一回の心拍出量が減少、代償性に心拍数の上昇が確認されます。また心室壁の肥大の影響で心室容積が減少し、徐々に左心房の拡張もみられるようになります。
診断としては心臓のエコー検査により左心室自由壁、心室中隔壁の厚さ、左心房の大きさなどを測定することで診断します。
しかし、心臓の筋肉を肥大させる病態は肥大型心筋症意外にも存在するため、心臓病の診断を行う際にはその他の疾患のとの鑑別も同時に行う必要があります。HCM以外が除外された場合に心臓のエコー検査にて重症度の評価を行います。
一般的に心室の厚さが5mmをグレーゾーン、6mmを超えている症例を心肥大陽性と判断します。
左心房が大きくなっている症例においては血栓形成の可能性があるために血栓予防薬の投薬も行います。
そのほかにも心臓の拍動数を抑制する薬剤など、心臓の病態に合わせた内服薬により治療を行いますが、内服薬で完治することはなく、基本的に薬剤の生涯と投与が必要となってきます。